端財アップサイクル講座を終えてafter finishing the upcycle course

先端教養「技術と社会」
~端財アップサイクル講座~ 大学からの発信を目指して

まず今回無事に我々にとっての初の試みであった講義「端財アップサイクル講座」を無事修了できたことについて
関係いただいた方々にこの場をお借りしてお礼を申し上げたい。
特にレイ・クリエーション原田徹朗社長・松井麻里さんには、最初の講義のアレンジからすべての講義のみならず学生一人一人にきめ細かく対応いただき本講座の成功につきましてはお二人のご尽力のおかげです、ここに深く感謝申し上げます。
また本当に学生一人一人と一対一で接していただいたクリエイターさんならびに工場関係者のみなさまにも感謝申し上げます。
受講生の数の10倍いや20倍ほどの大学教員以外の方々のご支援を受けて本講座が実現しましたこと改めてお礼申し上げます。


本講座「技術と社会」は、過去二年間「リサイクル」をテーマに取り組んできました。工場見学として、
「キンキ・パートナーズ」様、「共英製鋼」様にお世話になり、工場での取り組みをご紹介いただくと共に課題などもご提示いただき、
学生はそれを持ち帰り考えるといったことをしていました。
昨年度「リサイクル」を調べていた学生から「FREITAG」の商品に行き着き「アップサイクル」という言葉を見つけ「循環型社会」とは何かという
設問ができました。
折しも大学では「Sustainable」という単語が幅を利かせ始め「持続可能な社会」がキーワードとしてもてはやされ始めたことの影響もありますが、
大学でも取り扱っても良い課題ではないかと思い調査を始めました。
本学・創造工学センター津田和俊助教からハーマン・ミラー社での取り組みや「3Rから4Rへと」いった一般的話から、
本学工学研究科でのサスティナブルデザインあるいは環境工学的取り組みなどを聞かされ、
「持続可能な社会」という考え方は、「これからの学生」には必要なものではないかと思うようになりました。
しかし、ここまでは完全に耳学問で、実際の取り組みを大学の研究室以外で学生への講義として落とし込む方法はないものかと思っていました。
そんな矢先、原田社長から、まちデコールの企画の中の「不良品から富良品へ」の話をお伺いしました。「工場から出る端材を商品にする」と。
ここに学生を混ぜてもらうことはできないか原田社長に相談しました。二つ返事でオッケーしていただきました。
双方の思惑と私の怠惰もあって講義計画が遅々として進まなかった時期もありましたが、
結局原田社長・松井さんに15回分の講義計画を立てていただき2014年度後期講義として開始するこができました。
講義の目玉はなんといっても一対一でクリエイターさんが学生に付いてアイデア出しからものづくりまでサポートするという大学の講義では考えられない体制にあります。
これが実現できたのは、一にも二にも原田社長のおかげですが、これは学生にはプロのクリエイターさんに弟子入りするような形となったため貴重な体験になったと思います。
その中でも建築学科三回生の菅谷香世さんとsiesta international associates一級建築士事務所・酒井コウジさんとの組み合わせは特筆すべきもので、菅谷さんをどの世界へ連れて行くのですかという勢いで取り組んでいただき、また彼女もそれに応えたのではないかと思いました。
全員紹介したいところですが、紙面の都合で残念ながら割愛します。と、大学教員側は結局今回の講義では何もしてないと言われても仕方ないレベルの仕事しかしていないのですが、本講座を変えるきっかけとなった「持続可能な社会」を忘れたわけではありません。
二回のワークショップを企画し、その中で「持続可能な社会」を考えてもらえるように計画しました。
一回目が、「天川村道具講」の舩橋耕太郎さん、天川村での廃屋などを使った取り組みを紹介いただきました。
二回目が、安多化粧合板・安多茂一さんと前述、本学津田助教とのパネルディスカッション。パネルディスカッションは時間がなく残念だったのですが、安多さんもノルウェーで「まったくゴミの出ない暮らし」というのがあったということで両者共に同じような話をしていたはずなのですがヒートアップしました、学生にはどのように映ったのか分かりませんが。
ただ、このような意識付けのようなことをやったのですが、私自身も実際の工場見学で現場を見せていただき衝撃を受けたというのが本当のところです。
生産管理・品質管理・在庫管理と当たり前ですが、すべてがコスト管理の下に見事に動いていく。
「端材」と聞いていましたが、実際にはちゃんとスクラップ工場など行き先も決まっていて、実は置いておくということ自体が今度は「リスク」になる。
3S、5Sに人材育成…目の前の現実に圧倒されたのは言うまでもないのですが、いやそれでもまだ何か大学から提案はできるはずだということで、
今、この原稿を書いています。
まだ答えは見つかりませんが、来年度以降の本講座の中で学生にクリエイターさん、さらには工場の方々と一緒に考えて何かしら提案ができるように考え続けたいと思っております。
端材が端財アップサイクル講座によって端財となって商品化され売れるということも重要ですが、
暮らし方や製品をうまくデザインすることで違った豊かさを手にすることができるのではないかと思いを巡らせています。

 

2015年2月26日
大阪大学 e-square 特任講師 濱田格雄

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